インクの匂いがする真新しい辞書

　良家の子女が集まると言われる私立中高一貫校を希望した
小学生は周囲から孤立します。

　「お前のような者が行く所ではない。」

　そうした冷たい視線を浴びながら、小学生は懸命に孤独な
勉強を続け、ついに合格します。

　入学式には着飾った母が連れ添いました。華やか過ぎて
厳粛な式典には不似合いなほどのドレスを着て。

　入学式が終わり、母は書店に行き、国語辞典、漢和辞典、英和辞典、
和英辞典、英英辞典を買いました。どれも分厚く、辞書だけを入れる
専用のカバンが必要なほどでしたが、インクの香りが母の香水の
香りと入り混じり、少年は階段をひとつ上ったように感じました。

　どこかの中学入試に出てきた題材なのですが、うろ覚えなので
細部は異なるかも知れません。


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タグ：辞書